【ラフマ由来ヒペロシド、ラフマ由来イソクエルシトリン】
<標題>ラフマ由来ヒペロシド及びラフマ由来イソクエルシトリンによる睡眠の質改善の機能性について
<目的>成人健常者にラフマ由来ヒペロシド及びラフマ由来イソクエルシトリン各1mg/日を摂取させることが睡眠の質(眠りの深さ・起床時の睡眠に対する満足感)の向上に役立つことを検証した。
<背景>ラフマ葉は古くから利用されているが、ラフマ由来ヒペロシド及びラフマ由来イソクエルシトリンによる睡眠の質改善の機能性について、研究成果を総合的にまとめたレビューがないため、当該研究レビューを通じて検証を行った。
<レビュー対象とした研究の特性>PubMed(外国語論文)、J-DreamⅢ(日本語論文)及びUMIN-CTR(臨床試験登録データベース)の3つのデータベースを検索した結果、2報の文献を採用した。2報の文献はいずれも査読付きで、睡眠に対して一過性の悩みを持つ成人健常者を対象としたプラセボ対照試験であった。
<主な結果>睡眠に対して一過性の悩みを持つ成人健常者に、就寝前にラフマ由来ヒペロシド及びラフマ由来イソクエルシトリン各1mg/日を摂取させた。介入群はプラセボ群と比べ、総睡眠時間に対する相対的なノンレム睡眠の時間割合が摂取前後で有意に増加した(p=0.01)。OSA睡眠調査票MA版を用いた評価の結果、介入群はプラセボ群と比べ、入眠と睡眠維持の項目が摂取前後で有意に改善した(p=0.042)。
<科学的根拠の質>未発表のデータが存在する可能性が否定できないこと、2報の採用文献の評価方法が異なることやサンプルサイズの違いなど、様々なバイアスリスクを含んでいることは否定できない。これらは本研究レビューの限界と考えられる。
【GABA】
<標題>GABAの摂取が、日常生活における一時的に落ち込んだ気分に与える機能性に関する研究レビュー
<目的>健康な成人日本人男女がGABAを含む食品を摂取した場合と、GABAを含まない食品(プラセボ)を摂取した場合で、一時的な気分の落ち込みに影響を与えるかについて検証することを目的とした。
<背景>精神的負荷、身体的負荷に関わらず負荷が増大することは十分な休息を得ていれば負担にはならないが、一定期間十分な休息を得ずに継続した負荷がかかる場合、一時的に気分が落ち込むことが考えられる。GABAは、デスクワークなどを主体とする精神的負荷作業における一時的なストレスや疲労感の緩和、睡眠の質改善効果、一時的な活気・活力感の改善・維持について、いくつか報告されている。そこで、本研究レビューでは、日常生活において一時的に気分が落ち込んでいる人に対するGABAの摂取による効果について、網羅的に文献を検索し、機能性について検討した。
<レビュー対象とした研究の特性>英語、日本語の医学論文データベースを検索し、精査をした結果、健康な成人日本人男女を対象とし、GABAを摂取する群とプラセボ群を比較した試験デザインであり、一時的な感情状態を評価する指標としてPOMS2-ASを評価している文献を選抜し、1報の査読付論文を採用し、評価した。
<主な結果>評価した文献1報では、日常生活で一時的に気分が落ち込んでいる(うつ病や慢性疲労症候群の疾患ではない)健康な日本人成人男女が、GABA 100㎎/日を継続的に摂取した場合に、プラセボを摂取した場合に比べて、POMS2-AS「活気―活力」の指標が有意に改善されたことを報告している。
POMS2-ASは、Positive MoodやNegative Moodといった気分の主観的側面の評価に用いられており、POMS2-AS「活気―活力」は、Positive Moodに該当する尺度であるため、POMS2-AS「活気―活力」を「前向きな気分(Positive Moodの和訳)」と表現した。
本結果から、GABAを摂取することは、日常生活において一時的に気分が落ち込んでいる人を前向きな気分に改善する効果があると評価した。
また、この効果を一般消費者に分かりやすく伝えるために、「一時的に落ち込んだ気分を前向きにする」と表現した。
<科学的根拠の質>論文のバイアスリスクの評価では、採用論文は低度であった。調査対象とした論文は査読を実施したRCT論文であることから、科学的根拠の質は高いと考えられる。本レビューの限界として、論文数が少ないこと、バイアスリスクが完全に否定できなかったことが挙げられる。
<標題>GABA摂取による肌弾力維持機能に関する研究レビュー
<目的>健康な成人男女の肌弾力維持に対するGABAの機能性について検証することを目的とした。
<背景>日々の精神的・身体的ストレスが肌の状態を左右する因子であることが報告されている1)2)3)。真皮組織の主成分である弾性線維は、伸び縮みする組織(皮膚・動脈・肺など)に多くあって、その伸縮性を担っている。加齢や紫外線などの影響によって弾性線維の劣化が報告されているが、弾性線維の劣化・断裂は皮膚のたるみだけでなく、動脈中膜硬化や肺気腫の直接原因と考えられている4)。また弾性線維の低下による真皮層の菲薄化は、皮膚の脆弱性(スキン-テア)に繋がると考えられる。平成30年度診療報酬改定にあたり、褥瘡の危険因子に皮膚の脆弱性(スキン-テアの保有、既往)が加えられ、皮膚の脆弱性を予防するための栄養食品の重要性が高まっている5)。これらの予防・改善に役立つ食品を開発することは、国民の健康的な生活維持にきわめて重要である。
<レビュー対象とした研究の特性>英語、日本語のデータベースを検索・精査した結果、健康な成人を対象とし、GABAとプラセボを比較した試験であり、肌の弾性を評価している1報を採用し、評価した。
<主な結果>採用文献は、健康女性に対して、乾燥する時期に、肌弾力へのGABA 摂取(100 mg/日)の効果を調査しており、GABA摂取群はプラセボ摂取群に比べて肌弾力低下が有意に緩和された(P<0.05)ことを報告している。肌弾力に関連する肌の構造は全身で共通であり、性差もないことから、GABAは肌の弾力を維持し、肌の健康をまもることをたすける機能があると評価した。
<科学的根拠の質>採用文献が1報であるため出版バイアスは否定できず、肌弾力を測定した部位が頬のみであることから、今後さらなるエビデンスの蓄積が望まれる。しかし、採用文献はランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験の査読付き論文であり、評価指標も国内外において広く用いられている手法であることから、科学的根拠の質は問題ないと判断した。
参考文献
1) 針谷毅ら.アレルギー, 49, 463-471 (2000)
2) 相生章博ら.和歌山医学, 53, 113-120 (2002)
3) 佐藤育子ら.月刊ナーシング, 26, 98-103 (2006)
4) 福田悠.弾性線維と疾患.Connective Tissue, 24, 135-140 (1992)
5) 2018年1月24日 中央社会保険医療協議会 総会 第386回議事録(厚生労働省HPより) |