標題: DHAとEPAの血中中性脂肪低減作用について
目的:DHAとEPAを含む食品の摂取が、健康な成人(未成年者、妊産婦、授乳婦を除く)の血中中性脂肪低減に役立つかについて、研究レビューにより明らかにすることを目的とした。
背景:DHAとEPAは魚油に多く含まれ、化学構造からn-3系脂肪酸に分類される。n-3系脂肪酸は生体機能維持に欠かせないが、ヒトの体内で合成できないため、食品から摂取する必要があり、DHAとEPAについても積極的な摂取が推奨されている。DHAとEPAのもつ作用のうち、血中中性脂肪低減作用についてはすでに多くの研究報告があるが、健康な成人に焦点を絞り、まとめた報告は少ない。本調査では、これらの者に焦点を絞った検証を行なった。
レビュー対象とした研究の特性:国内外の4つのデータベースを用い、それらが開設された日から検索日(2016年1月18日~2月2日)までを検索対象期間とした。被験者は健康な成人であることを条件とした。更に、血中中性脂肪を正常域内に絞るため、被験者の血中中性脂肪が149 mg/dL以下であること、もしくは149 mg/dLを基準として適切な層別解析が行われていることを条件として加えた。最終的に採用した文献数は7報で、いずれの文献もヒトでの試験方法として質が高いとされる試験デザイン(ランダム化比較試験)であった。各研究における利益相反の申告はなかった。
主な結果:採用された7報のうち、血中中性脂肪低減に対して有効性が認められた文献は、効果が限定的なものも含め6報であった。残り1報では有効性が確認されなかった。有効性に対して肯定的な文献が半数以上であることより、総合評価として、DHA(170~3,600 mg)とEPA(12~5,400 mg)あわせて182~9,000 mg/日を含む食品の摂取が、健康な成人の血中中性脂肪低減に役立つことが示された。
科学的根拠の質:本調査では、国内外の複数のデータベースを用いて文献検索を行ったが、英語と日本語のみをキーワードとしたため、他言語で書かれた文献の有無を調査できなかった。また、採用文献のバイアスリスクは高とせざるを得なかったが、いずれの文献もヒトでの試験方法として質が高いとされる試験デザイン(ランダム化比較試験)であることから血中中性脂肪低減作用に対する肯定的な結論は支持できるものと判断した。また、採用文献の7報には日本人での試験が採用されなかったため、人種間の差が踏まえられていないことが問題点のひとつとして挙げられるが、血中中性脂肪が200 mg/dL以下であれば日本人を対象とする論文もあり、有効性を示していることから、本レビューの結論は日本人にも外挿できると考えられる。これらのことから、この機能性に関する科学的根拠の質は十分であると判断した。 |