1.肌機能について
【標題】
サケ鼻軟骨由来プロテオグリカンの肌機能に関する研究レビュー
【目的】
サケ鼻軟骨由来プロテオグリカンによる肌の弾力の維持に役立つことについて検証しました。
【背景】
皮膚は成人で約1.6m2の面積におよぶ人体最大の臓器です。皮膚の主な機能は以下の3つです(1), (2)。
① からだを外界から守る機能
様々な外的刺激に対し、からだの内部組織を守る役割を果たします。
② 体温を調節する機能
外界からの体温変化を和らげます。血管拡張・収縮、及び発汗の調節により熱の放散を調節します。一般的に知られる皮膚呼吸に必要な機能です。
③ 知覚
触覚、痛覚、温覚、冷覚などを感じ、その情報を脳へ伝えます。
皮膚は表面側から、表皮、真皮、皮下組織の3つの組織からなります。この中でも、特に、真皮は膠原線維(コラーゲン線維)と弾性線維(エラスチン線維)から成り立ち、これら線維が持つ弾力性を使って、外界の圧力からからだの内部を守るために重要な役割を果たしています。日常生活において、紫外線、喫煙、ストレスなどにより、コラーゲン線維やエラスチン線維が減少あるいは変質すると、その弾力や張力が低下します。それにより、表皮が傷つきやすくなります。
表皮の角層も、からだを外界から守る機能を担います。角層は体内の水分を保持するだけでなく、外からの異物の侵入、また刺激に対するバリアの役割を果たしています。角層は、皮膚の表面側から見て真皮と接する最も深い部分で細胞が生み出され、形を変えながら上方へ移動することで形成されます。この形成過程において、真皮は、表皮へ栄養分を補給し、さらに足場としても働いています(3)。
以上の観点から、真皮のクッション性は、表皮の角層による保湿作用と同様に健やかなる皮膚の機能を保つために重要です。しかし、健常人を対象としたプロテオグリカンの肌状態への関与について、臨床研究を総合して評価した研究レビューは実施されていませんでした。
【レビュー対象とした研究の特性】
健常者を対象として、サケ鼻軟骨由来プロテオグリカンの摂取による肌機能への影響をランダム化二重盲検試験で実施した文献を検索致しました(検索日は、2019年5月22日)。
文献検索の結果、条件を満たす文献が1報抽出されました。
【主な結果】
データベース検索により1報の文献が抽出されました。
該当の論文は、サケ鼻軟骨由来プロテオグリカンを5mg含有した食品を2週間摂取することにより、肌の弾力の評価指標(R6, R8)の改善が認められたことを報告していました。
【科学的根拠の質】
本研究レビューの限界は、抽出できた文献が1報であり、報告例が少ないことが挙げられます。しかしながら、本論文は、peer review誌に発表された論文であり、プラセボとのランダム化二重盲検試験で実施され、エビデンスレベルの高い内容であります。
結論として、サケ鼻軟骨由来プロテオグリカンを摂取した場合、肌の弾力の維持に役立つ機能があることに関して肯定的な科学的根拠があると判断しました。
参考文献
1) 皮膚科疾患ビジュアルブック:学研
2) シンプル皮膚科学 南江堂
3) A J Engler. et al. Matrix Elasticity Directs Stem Cell Lineage Specification, Cell. 2006,126, 677-689.
2.膝関節について
【標題】
サケ鼻軟骨由来プロテオグリカンによる関節軟骨の保護、膝関節の可動性をサポートする機能性に関するSR
【目的】
膝関節の不快感を持つ健常者が、サケ鼻軟骨由来プロテオグリカンにより、その不快感が緩和されるかを検証しました。
【背景】
関節には、特徴的な構造として、連結する骨の関節面には軟骨(関節軟骨)をもち、この軟骨により、関節の動きを可能としています。加齢等により筋力が低下すると膝関節の軟骨に負担がかかるようになり、膝関節の不快感が現れます。膝関節の不快感の顕著な指標として、物理的には関節可動域の減少、生理学的には軟骨分解・合成マーカーの変動があげられます。
サケ鼻軟骨由来プロテオグリカンの摂取が関節軟骨の保護に対する影響や、膝関節の可動性及び日常生活における膝の動きに関する研究レビューはありませんでした。
【レビュー対象とした研究の特性】
健常者(膝関節の不快感を持つ者を含む)を対象として、サケ鼻軟骨由来プロテオグリカンの摂取による関節軟骨への影響をランダム化二重盲検試験で実施した文献を検索致しました(検索日は、2017年7月11日)。
文献検索の結果、条件を満たす文献が2報抽出されました。
【主な結果】
データベース検索により2報の文献が抽出されました。1報は、サケ鼻軟骨由来プロテオグリカンを10mg以上含有した食品を12週間摂取することにより、膝関節の可動域の改善作用及び日常生活における膝の動きをサポートすることが報告されていました。
他の1報は、膝関節の不快感(日本版変形性膝関節症患者機能評価表(JKOM)≧41)を一時的に持つような健常者において、サケ鼻軟骨由来プロテオグリカンを16週間摂取(10mg/日)することにより、Ⅱ型コラーゲンの分解を減少させ、軟骨代謝の改善を介して、軟骨保護作用を示すことが報告されていました。
以上より、サケ鼻軟骨由来プロテオグリカンは、「糖(糖質、糖類)」や「たんぱく質」とは異なる作用により、膝関節の不快感を緩和し、膝関節のサポートに寄与するものと考えられました。
【科学的根拠の質】
本研究レビューの限界は、抽出できた文献が2報であり、報告例が少ないことが挙げられます。また、これら2報の論文内で報告されている臨床試験はいずれもUMIN-CTRにプロトコールが事前登録され行われており、透明性の高い試験でした。更に、2報の文献は、peer review誌に発表された論文であり、プラセボとのランダム化二重盲検試験で実施され、エビデンスレベルの高い内容でした。
結論として、サケ鼻軟骨由来プロテオグリカンを摂取した場合に、一時的な膝関節の不快感を持つ健常者に対して、関節のサポートをする機能があることに関して肯定的な科学的根拠があると判断しました。 |