(ア)標題
イチョウ葉由来フラボノイド配糖体、イチョウ葉由来テルペンラクトンによる脳の血流改善を作用機序とする記憶し再生する(思い出す)力の維持について
(イ)目的
「健常高齢者を対象に、規格化イチョウ葉エキス(フラボノイド配糖体24%及びテルペンラクトン6%含有)を摂取させると、プラセボ摂取に比べて、脳の血流改善を作用機序として記憶し再生する(思い出す)力を維持するか」を研究レビューにより検証した。
(ウ)背景
加齢に伴い脳の血流が低下し、記憶し再生する(思い出す)力が低下すること[参考文献6,7]は、高齢期生活の質を低下させると考えられる。そのため加齢に伴う脳血流の低下を改善し、記憶し再生する(思い出す)力を維持することで、高齢期生活の質の改善や健康の維持に寄与できる食品素材として欧州では古くから脳の健康に役立つハーブ医薬品であるイチョウ葉エキスに着目した。
(エ)レビュー対象とした研究の特性
外国語及び日本語のデータベースを用いて、健常高齢者を対象に、規格化イチョウ葉エキス摂取による記憶し再生する(思い出す)力及び脳の血流を同一試験で評価した無作為化コントロール試験を収集した。
(オ)主な結果
検索した結果採用文献は外国語文献1報で、健常高齢者を対象に、記憶し再生する(思い出す)力と脳の血流を同一試験で評価した唯一の文献であった[参考文献1]。対象者は健常な60~70歳のブラジル人男性(国際的認知症スクリーニング検査法MMSEにより健常者を選抜し、試験前及び試験期間中1ヶ月ごとに健康状態を確認)であった。就寝前に規格化イチョウ葉エキス80mg/日、8ヶ月間の摂取により、プラセボ摂取に比べて、日常会話をスムーズに行う機能などの『言葉を正確に記憶し再生する(思い出す)力』や、外出時の道順を覚える機能などの『図形(物のイメージ)や空間的位置(位置情報)などの見たものを記憶し再生する(思い出す)力』が有意に高まった。これらは評価指標として学術的にコンセンサスが得られ、日本人でも妥当性が得られた試験の結果であった。また脳の血流も有意に増加した。よって、就寝前の規格化イチョウ葉エキス80mg/日の摂取は、「言葉・物のイメージ・位置情報」を脳に記憶し再生する(思い出す)力を維持する機能があることが示された。
(カ)科学的質根拠の質
採用文献のバイアスリスクは低く、質の高い文献であった。
対象者はブラジル人の健常な高齢者であったが、中国人対象の試験でもイチョウ葉エキス摂取により脳の血流が増加することから[参考文献2]、日本人への外挿は可能と判断した。研究の限界は対象者が日本人以外で、文献数が1報であり、質の高い試験実施により結果の質を高める必要がある。
[参考文献1]
Santos RF et al., Cognitive performance, SPECT, and blood viscosity in elderly non-demented people using Ginkgo biloba, Pharmacopsychiatry, 36(4), 127-133, 2003.
[参考文献2]
Zhang SJ et al., Effect of western medicine therapy assisted by Ginkgo biloba tablet on vascular cognitive impairment of none dementia, Asian Pacific Journal of Tropical Medicine, 5(8), 661-664, 2012.
[参考文献6]
中野正剛ら,99mTc-ECD SPECTによる脳血流量分布の正常加齢変化のSPM96を用いた検討,日本老年医学会雑誌,37(1),49-55,2000.
[参考文献7]
Caserta MT et al., Normal brain aging clinical, immunological, neuropsychological, and neuroimaging features, Int Rev Neurobiol, 84, 1-19, 2009.
(構造化抄録) |