(ア)標題
健常者の関節軟骨の維持に対するグルコサミン塩酸塩(以下、グルコサミン)の有用性について
(イ)目的
成人健常者を対象にした臨床試験において、機能性関与成分グルコサミンが関節軟骨の維持に役立つかを検証する。
(ウ)背景
関節軟骨は分解と合成を繰り返し代謝されていることが知られているが、グルコサミンの摂取が健康な関節軟骨の維持に、どのような影響を与えているか明らかにする必要があった。
(エ)レビュー対象とした研究の特性
事前に作成した手順に基づき研究レビューを実施。成人健常者(変形性関節症等の患者を除く)に対するグルコサミン摂取による関節軟骨への影響を評価した臨床試験の論文を収集した。抽出した論文を精査し、疾病患者を対象にした論文、評価指標や対象部位が目的と異なる論文、およびヒトを対象とした臨床試験以外の論文は除外。最終的に採用した論文は2 報であった。採用論文に関して、研究の限界、直接性、評価項目におけるエビデンスの強さを評価した。採用論文の概要は次の通り。①競輪選手41名を3群すなわちグルコサミン1,500mg/日群(14名)、グルコサミン3,000mg/日群(14名)および関与成分を含まないプラセボ群(13名)に分け、3ヶ月間摂取させ、摂取前後の血清および尿を採取して軟骨代謝マーカーを測定した。②サッカー選手21名を2群に分け、グルコサミン1,500mg/日または3,000mg/日を3ヶ月間摂取させ、摂取前後および摂取中止後3ヶ月の尿サンプルを採取して、軟骨代謝マーカーを測定した。
なお、採用論文における被験者の平均年齢は20歳以上であり、20歳以上を被験対象者の主体としている。本研究は大学などの公的機関にて行われた研究であるため、被験対象者として学生ボランティアを募って実施していたこともあり、19~22歳(19.4~21.2歳)の年齢幅の中、一部20歳未満の被験者も混在している。しかしながら、あくまで対象の主体は20歳以上であり、最初から20歳未満を主な被験対象として実施した臨床試験ではない。また、厚生労働省が公表している、日本人の食事摂取基準2015の報告における年齢区分の中で、食品の摂取基準においては18歳以上を成人とみなしている。したがって、あくまで健常人の食品の摂取試験においては、18歳以上が厚生労働省の定める成人と判断でき、除外されなくてはならない未成年の対象者とは17歳以下の者であると考えられる。以上のことから、食品栄養学的にも、一般的に18歳以上は20歳以上と栄養必要量や代謝についても変わらないものと判断した。
(オ)主な結果
①軟骨分解マーカーであるCTX-Ⅱがグルコサミン群(1,500mg/日、3,000mg/日)において有意差はつかなかったものの低下傾向を示し、3,000mg/日群では低下度合いが顕著だった。②グルコサミンの摂取前後でCTX-Ⅱが有意に減少し(p<0.01)、摂取中止により元のレベルに戻った。グルコサミンに関節軟骨成分の分解を抑制し合成を維持することで代謝を改善し、関節軟骨を維持する機能があることが示唆された。
(カ)科学的根拠の質
健常者の関節軟骨代謝について検証するには、血中や尿中における生物的指標を評価指標に用いて臨床研究を行う他なく、それ以上の外科処置による観察などは倫理的に問題があり、本採用論文の研究手法が研究の限界だと考えられる。被験者群は同一母集団より選抜しており、偏りの存在は非常に低い。本知見の一般化可能性は高く、グルコサミンの摂取が日常生活や運動時負荷に対する関節軟骨の維持に役立つことが示されたと考えられる。 |