(ア標題) 健常者の関節軟骨の維持に対するグルコサミン塩酸塩の有用性について
(イ目的) 成人健常者を対象にした臨床試験において、機能性関与成分グルコサミン塩酸塩が関節軟骨の維持に役立つかを検証する。
(ウ背景) 関節軟骨は分解と合成を繰り返し代謝されていることが知られているが、グルコサミン塩酸塩の摂取が健康な関節軟骨の維持のため、どのような影響を与えているか明らかにする必要があった。
(エレビュー対象とした研究の特性) 2014 年7 月から2014 年12 月の間に英語及び日本語の検索データベースを用いて文献検索を行い、これまでに出版された成人健常者(変形性関節症等の患者を除く)に対するグルコサミンの摂取による関節軟骨への影響を評価した臨床試験の論文を収集した。まずタイトルや要約の内容をもとにした文献の絞込みを行い、続いて本文の内容を確認することで研究レビューの対象となる論文を選抜した。最終的に採用された論文は以下に概要を記載する2 報であった。なお、いずれの研究もグルコサミン原料を製造する企業である甲陽ケミカルが関与したものであった。①競輪選手41 名を3 群すなわちグルコサミン塩酸塩1,500mg/日群(14 名)、グルコサミン塩酸塩3,000mg/日群(14 名)および関与成分を含まない偽薬群(13 名)に分け、3 ヶ月間摂取させ、摂取前後の血清および尿を採取して軟骨代謝の指標を測定した。②サッカー選手21 名を2 群に分け、グルコサミン塩酸塩1,500mg/日または3,000mg/日を3 ヶ月間摂取させ、摂取前後および摂取中止後3 ヶ月の尿サンプルを採取して、軟骨代謝の指標を測定した。
(オ主な結果) ①軟骨分解の指標であるCTX-Ⅱがグルコサミン塩酸塩群(1,500mg/日、3,000mg/日)において有意な差はなかったものの低下傾向を示し、用量依存性が見られた。②グルコサミン塩酸塩の摂取前後でCTX-Ⅱが有意に減少し(p<0.01)、摂取中止により元のレベルに戻った。よって、グルコサミン塩酸塩に関節軟骨成分の分解を抑制し合成を維持することで代謝を改善し、関節軟骨を維持する機能があることが示唆された。
(カ科学的根拠の質) 健常者の関節軟骨代謝について検証するには、血中や尿中における生体指標を評価指標に用いて臨床研究を行う他なく、それ以上の外科処置による観察などは倫理的に問題があり、本採用論文の研究手法が研究の限界だと考えられる。被験者群は同一母集団より選抜しており、結果が偏るリスクは非常に低い。本知見の一般化可能性は高く、グルコサミン塩酸塩の摂取が日常生活や運動時負荷に対する関節軟骨の健康維持に役立つことが示されたと考えられる。 |